書評

【書評】才能はいらない イラストで食う技術

最近、本は堅苦しいビジネス書ばかり読んでたので、ここらでイラスト系の本を読んでみる事にしました。

読んだのはニリツさんの「才能はいらない イラストで食う技術」です。タイトルから予想できる通り「絵の技術の指南書」ではありません。絵を仕事にし続けることへの指南書となります。

この本を選んだ理由

まあ普通にニリツさんの絵が上手いなと思っていること。毎回、構図に凝ったハイセンスな絵を描く人はどういう事を考えているのかが気になったからです。

正直な所、「才能は不要」という言葉は胡散臭いと思ってました。「運が必要」「膨大で他者に真似できないような努力が必要」そんなオチなんだろうなと。

ともあれ、イラスト技術書で「思考」について書かれている本は大変貴重です。世に出てる技術書の9割以上が「ねっ?簡単でしょ的な自分節全開で、わからない人・上達できない人の気持ちが理解できない人が書いたものだからです。

著者・本の概要

【著者 ニリツさん】

ベストセラーとなった『ダンジョンに出会いを求めるのは間違っているだろうか ファミリアクロニクル』や、電撃文庫の人気シリーズ、『賭博士は祈らない』、富士見ファンタジア文庫の『誰が為にケモノは生きたいといった』ほか、多数のライトノベル装画を担当した人気イラストレーター・ニリツ。

本の紹介文より引用

【本の概要】

作家として現役でありながら専門学校での講師も行い、「イラスト技術は天性の才能ではない」という確固たる信念のもとに展開する、独自の切り口による教授法が好評を博しており、本書でも(いわゆるツールの使い方やデッサンの技法などではなく)、イラストレーターを目指す上での心構えや考え方、練習法を中心にメソッドを展開し、特に著者が実際に担当したライトノベル装画を題材にした実例解説を行います。

本の紹介文より引用

簡単にまとめると「現役人気イラストレーター」兼「専門学校講師」の方が書かれた本となります。片方の属性を持っている人は数多いですが、両方は珍しいですね。

 

本の内容抜粋

ニリツ絵は服を着ているのにエロいと言われる。パーツとしてエロいものを描くのではなく、エロいシチュエーションを描くことに力を注いでいる。

私は「なんか見栄えする構図」「デッサン狂いを必死で直す」事で手一杯です。そこに意図や目的を練りこむ事は至難です。でもプロ全員がやっているわけではなさそうですね。

良いイラストを描くためのアンテナをはる事
 ①ツイッター
  流行・トレンドの確認
  共感性が重視される
 ②PIXIV
  人気の序列
  クオリティ勝負
 ③ライトノベルイラスト
  商業での制限のなかで魅力を出す
 

 各分野のイラストではとりわけ「髪」「目」「手」にトレンドが表れやすい。

これを自覚せず、普段なら趣味で自然にやっているのが天才であり、意識的に行っているのがニリツさんなのかと解釈しました。

ニリツ式模写練習法

この本のメインとも言える内容です。氏の練習法(解析法)が紹介されています。

文章で説明しきれるような内容ではありませんが、簡単にまとめますと

① 模写対象から輪郭を抽出
② 自分が普段描いている素体イラストを描く
③ ②と①を比較し、②を改造して①へ近づける
④ ③を元にして、模写対象の絵を見ながら描きこんでいく

 模写対象の絵は「ベッドで寝ている姿」なのですが、ニリツ氏の絵は「立ちポーズ」でした。従来の模写からは大きく逸脱しています。

 

【模写の意図】

模写⇒再現⇒分析という作業を作家毎に複数回繰り返すと表現やルールの引き出しがどんどん増えます。

自分の目指したい絵が、実はどういうロジックで構成されているのか、そういった情報を吸収するためには、こういった構築・分解作業がかかせません。

本文58ページより引用

一番感銘を受けた文章です。ツイッター・PIXIV・ラノベでアンテナを張りつつ、有用と思った絵の技術は分析によって習得していく必要があるわけですね。

 

まとめ

・アンテナを絶えず張り続け、流行を把握すること。

・憧れの絵は分析によってロジックを理解すること。

・絵のシチュエーション、配色、構図は明確な意図・理屈をもって描くこと。

・勘などのセンスを信じないこと。

 このあたりが、氏の主張と思いました。

 萌え絵を始めとしたラノベ系のイラストの歴史はまだまだ浅いです。しかし、数十年の時が流れ、ベテランイラストレーターでも「最新の塗りを取り入れ今も成長している人」「何も変わらず古臭い絵柄のままの人」が分かれる様を見かけるようになりました。

 その二者を分けるのはこのような目的意識なのかもしれませんね。

 

カグラ
カグラ
自分にはまず基礎画力とは思いますが、土日に「ニリツ式分析模写」をやっていきたいと思います。